幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
紀佳との女子会が盛り上がり、帰宅したのは午後十時過ぎだった。
「ただいまー」
洸がいないのはわかっているけれど、実家暮らしの時から抜けない癖でつい口に出してしまう。
玄関の照明が人の気配を察知してパッと明るくなり、なにげなく足元を見た瞬間私は首を傾げた。
……洸の革靴がある。
思わずパッと顔を上げてリビングダイニングに続く扉の方を見ると、隙間から明かりが漏れていた。
帰って来たんだ。……偶然だとは思うけれど、会いたいと願ったのが通じたようでうれしくなる。
ソワソワしながら廊下を進み、なんとなく音を立てないようにドアを開ける。
リビングはテレビもついておらずとても静かで、キッチンにもダイニングにも彼の姿はない。
しかし、よく見るとソファの端から彼の長い脚がにゅっと見えていた。私の気配に気づく様子もないので、うたた寝でもしているのだろうか。
「洸?」
小さく名前を呟いて、ソファに近づく。すると、クッションを枕にした洸が、予想通りすやすやと寝息を立てていた。
大きな体を軽く曲げて縮こまるように寝ているのに、それでもソファからはみ出してしまっている。
そのアンバランスさがかわいく思えて、クスッと笑みがこぼれる。私はソファの前側に回ると、ぺたんと床に座って、洸の寝顔を見つめた。