幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 前髪に隠れているけれど、意外と凛々しい眉なんだよね。

 羨ましいほど長い睫毛はマスカラも塗っていないのに黒々としていて、鼻筋が綺麗で、唇は薄めで……そういえば、キス、されたんだよね。一度だけ。

 彼が謎の修行に入る前……私が洸に好意を持ったら迷惑かって聞いたら、『迷惑なわけないだろ』って。

 あの時の洸は見たこともない大人の男の人の顔をしてた。

 それから大きな手で私の頭を掴んで、少し強引に唇を……。

 そこまで想像したらなんだかキスの感触まで蘇ってきて、顔から湯気が出そうになる。

 慌てて回想シーンを脳内からかき消し、自分を落ち着かせるように息を吐いた。

「ホントにもう、どうしてくれるの。悔しいくらいカッコよくなっちゃってさ」

 眠っている洸に、本心を打ち明ける。

 当たり前だが返事はなく、彼を見つめれば見つめるほど、愛しさが募っていく。

「……仕返し。してもいい?」

 レストランで飲んだお酒のせいもあるのかもしれない。

 私は彼の綺麗な寝顔に吸い寄せられるようにして顔を近づけ、目を閉じる。それからほんの微かに、触れるか触れないかくらいのキスを洸の唇に落とした。

 唇を離した直後、洸のまぶたがぱちっと開いて、私は息をのむ。

 やばい。キスしたの、バレた……?

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