幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「あれ? 美葉……」

 ゆっくり瞬きをしながら、洸がのっそり上半身を起こす。

 驚いたり慌てたりする様子がないので、どうやらセーフだったようだ。

「た、ただいま。今、帰って来たところだよ」
「そっか。なんかいい夢見てた気がするんだけど……内容忘れちゃったな」
「えっ。な、なんだろうね。美味しいもの食べたとか?」

 必死で色気のない方向へと誘導する。

 キスも食事も口に関することだから、万が一唇になにか触れた感触を覚えていたとしても、なにか食べていたと思えばそこまで不自然じゃない。

「……そんな感じかも。美葉は? 楽しかった?」
「うん、久しぶりだったから色々話せたし」
「ならよかった」

 寝起きの気だるさを残した、無防備な笑顔に心が和む。

 家を出ていく直前の洸はなにか思いつめた顔をしていたけれど、今の彼にはそれがない。心の中にあった心配事がなくなったのかもしれないと、なんとなく思う。

「ねえ。帰って来たってことは、修行は……終わり?」

 これからは毎日一緒に過ごせるのかと、そんな期待を抱いて尋ねてみる。

< 138 / 204 >

この作品をシェア

pagetop