幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
【お父さんと結婚三十周年のディナーに来ています。美葉は今日も残業だと思ってご飯用意してないから、適当に済ませてね】
そっか……今日だったっけ、結婚記念日。
添えられていた画像は、高級そうなレストランでグラスを合わせる両親の写真。
昔から仲のいいふたりは、間もなく六十になろうという年齢の今でもラブラブなのだ。クリニックのスタッフや、たまに患者さんからも冷やかされるらしい。
私が恋愛や結婚に憧れているのも、幼い頃から幸せそうな両親を見て育った影響が強い。
【おめでとう。家のことは気にしないでゆっくりしてきてね】
返信を済ませ、キッチンで冷蔵庫を覗く。しかし、びっくりするほどなにも入っておらず、がっくり肩を落とした。
棚を漁ればカップ麺くらいはあるだろうけれど、医者の仕事は体力勝負。できればもう少し栄養のあるものを食べたい。
「帰って来たばかりだけど買いに行くか……」
冷蔵庫を閉めて、玄関へと逆戻り。疲れてむくんだ足をもう一度パンプスにねじ込んで、徒歩圏内にある牛丼屋へ向かった。