幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
四月二週目、月曜日の午前中。八家先生に代役を頼まれたMVPの術前カンファレンスに、担当の麻酔科医として参加した。
看護師や薬剤師、検査技師など十数名のチームが集められたその部屋で、患者さんのデータや術式を事細かに執刀医が説明する。
事前に八家先生から聞いていた通り、執刀するのは高比良院長の次男で、私の幼なじみ。先週着任したばかりの洸だ。
「手術の難易度は高くありませんが、逆流が起こる可能性があります。弁の形成前後、また心拍動の再開後にも注意深く弁の機能評価をします。逆流が残存している場合は追加処置として――」
洸は傍らのホワイトボードにわかりやすい図を示し、イメージを共有してくれる。
実はこのカンファレンスが始まる前、参加者の中には『傲慢なお坊ちゃん先生のお守りは勘弁だよな』と噂している者もいたのだが、彼らはすぐに考えを改めたようで、洸の話に真剣に聞き入っていた。
「患者の全身管理は雪村先生にお任せします。血圧の変化はとくに注視して」
「はい。承知しました」
幼なじみと仕事をするってどんな感じだろうと不安もあったけれど、洸がとてもフラットに接してくれるので、こちらもやりやすい。
この分なら、本番のオペも心配はなさそうだ。