幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「なにもかも洸の策略通りだったなんてびっくりだよ。おかげで一人前の麻酔科医になれたから、感謝しかないけどさ」

 展示を見終わった後は、水族館に併設したカフェレストランで休憩することにした。 

 潮風が心地よいテラス席で飲み物とパンケーキを頼み、料理を待つ間、のんびりおしゃべりを楽しむ。

「俺が修行してる間に、美葉を他の奴に取られないように必死だっただけだよ」
「そ、そうですか……」

 自分の気持ちを全く隠すことがなくなった彼は、愛情表現が本当にストレートだ。心臓がいくつあっても足りない。

「ねえ、修行についてはなんとなく理解できたけど、試練っていうのは結局なんだったの?」

 高校時代の私の言葉を鵜呑みにして、クールな男に変身しようと努力していた。それが彼の言う修行だったようだけれど、試練についてはイマイチよくわかっていない。

「……ああ、そろそろ覚悟決めないとな。今日はそれを伝えるためにデートしてもらったんだから」

 椅子に座ったまま姿勢を正した洸が、まっすぐ私の方を見た。

 なにか大切な話があるみたい……。

 真剣な眼差しに射貫かれて胸が高鳴り、じわじわと体温が上がっていく。

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