幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「雪村先生、これ、お昼にぜひ」
カンファを終えて麻酔科に戻ると、八家先生が私のデスクにレジ袋をドサッと置いた。
袋にプリントされているのは、病院近くの商店街にあるおにぎり屋さんの店名。中にはおにぎりが四つ入っている。
「えっ? どうしたんですかこんなにたくさん」
「代役引き受けてくれたお礼だよ。ちなみに俺のおすすめは大葉味噌」
「ありがとうございます。なんだか逆に申し訳ないです」
「いやいや。もとはといえば俺のミスだから。じゃ、明後日の手術当日もよろしく」
八家先生はおにぎりを置いて、さっさとオフィスを出て行ってしまう。
美味しそうだけど、こんなに食べられないな……。
たまたま室内にいた先生数人に食べないかと声をかけてみたものの、「愛妻弁当があるから」とか「これから緊急手術で」とか、色々な理由でフラれてしまった。
他におすそ分けできそうな人は……そうだ、洸。
昔からパンよりご飯派な彼は、お弁当といえばもっぱらおにぎり専門。今でも嗜好が変わっていなければ、喜んでくれるに違いない。
彼が休憩中かどうかはわからなかったけれど、同じ階にある心臓血管外科のオフィスにふらりと出向き、覗いてみた。