幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「おい、ちょっと待てって小森。……すみません、失礼します」
「う、うん。なんだか重ね重ねごめんね」
忙しなくカフェを後にするふたりの姿が見えなくなると、私は思わずため息をついた。
「小森さんって、洸のこと好き……だよね」
「みたいだな。何度かハッキリ断ってるけど、結構打たれ強いみたいで」
知らなかった。私に心配をかけないよう、黙っていてくれたのかな。
「彼女、仕事に関してはしっかりしてるけど……結婚してる相手にしつこくするのは問題だよな。あらぬ噂が立てられたりしても困るし、今度、改めて迷惑だってちゃんと伝えるよ」
「うん……ありがとう。個人的には、竜崎先生にも頑張ってほしいけど」
前にも彼は小森さんのことを心配していた。水族館に誘ったのも彼からのようだし、ただの同僚や友人以上の気持ちがあるのではと思えてならない。
「そうだな。彼の片思いが報われるのを祈ろう」
「うん」
思いがけず同僚に会ってしまったのは予想外だったし、小森さんや竜崎先生の気持ちを考えると複雑だ。
だけど、私たち夫婦がデートを楽しむことを遠慮する必要はないよね。
「これ食べたら、もっと海の近くを散歩しに行かない?」
「もちろんどこへでもお供します。俺、コバンザメだし」
「ふふっ。まだ言ってる」
私が笑ったところで洸がすかさず苺の刺さったフォークを向けてきて、まだあきらめてなかったんだ、と思いつつ、素直に口を開ける。
苺は甘くて酸っぱくて、とても幸せな味がした。