幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「美葉。みーよ。みよちゃん」
洸に何度も名前を呼ばれ、ぺちぺち、軽く頬を叩かれる。
「ん~、なに?」
「なに、じゃないだろ。ほら、水飲んで」
ふわふわした視界に、水入りのガラスのコップが映る。言われるがまま中身を飲んで、ぷはっと息をつく。
えーと、ここはどこだっけ?
辺りを見回すと、私と洸が座っているシンプルなグレーのソファをはじめとした、モダンなインテリアが目に入る。
窓の外には夜景が広がっていて、靄がかかっていたような記憶が段々と戻ってくる。
そうだ、私、洸とホテルに来ていたんだっけ。
「私たち、レストランにいたんじゃなかったっけ……?」
「いたよ。ここの和食レストランで食事した」
「だよね。……イクラがたっぷりのった小鉢があって、洸が嬉しそうで」
「それ、前菜だからかなり序盤の記憶だな」
洸に苦笑され、そうだっけ、といまだにぼんやりした思考で考える。
「他のお料理も美味しかったのは覚えてるけど……緊張してたからかな。お酒ばっかり飲んでた気がする」
「そうだな。だから、こういう状況になってる」
「こういう状況?」
「そう。呑気な顔してるけど、美葉は今にも食べられちゃいそうなんだよ」