幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 室内にはデスクとパソコンが並び、隅に冷蔵庫やウォーターサーバー、休憩用のソファが置かれている。そのインテリアや雰囲気は麻酔科とそう変わらない。

 洸はソファに深く腰掛け、タブレットを睨みながらゼリー飲料を口にくわえていた。今なら話しかけても大丈夫そう。

「失礼します」と断って入室すると、声に気づいた洸が目線を上げ、私の姿をとらえる。

 涼やかな目が大きく見開かれたかと思うと、彼はゼリー飲料を口から離した。

「みっ……」

 そしてなにか言いかけ、パッと口に手を当てる。いつもの癖で『美葉』と言いそうになったのかもしれない。

 直後にゴホンと咳払いをした彼は、クールな表情に戻って私を見つめた。

「雪村先生。心臓血管外科になにかご用ですか?」
「今、お忙しいですか? おにぎりをたくさんもらっちゃったので、洸先生のお昼がまだだったらおすそ分けしようかと」
「おにぎり……」

 少し興味を示した彼に、袋の口を大きく広げて中身を見せる。

「食べる」

 相変わらず無愛想だったけれど、即答した彼にクスッと笑ってしまう。

 お腹が空いていたみたい。よかった。

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