幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
仕事でも私生活でもかけがえのない人――side洸

 六月に入ると関東は例年より早く梅雨入りし、毎日気が滅入るような天気が続いていた。  

 美葉と結ばれて幸せの絶頂にある俺には天気なんて取るに足らないことだが、浮かれてばかりいないでちゃんとけじめを付けなければいけないことがある。オペ看の小森さんの件である。

 俺は自分の手が空いたタイミングでナースステーションに出向き、彼女の姿を探す。

 パッと見姿が見えなかったので他の看護師に所在を聞いたところ、麻酔科の竜崎先生に呼び出され、どこかへ行ったということだった。

 水族館で小森さんと一緒にいた、あの若い専攻医だ。

 もしも彼と小森さんがうまくいっているなら、あえて俺がしゃしゃり出る幕でもないのかもしれない。

 そんなことを思いながら心臓血管外科に戻る途中、偶然噂のふたりの姿が目に入る。彼らは人気のない廊下で向き合っており、その表情はどこか深刻そう。

 仕事の話をしているだけの可能性もあるが、どうしても気になって、廊下に点在する太い柱に身を隠しつつ彼らのいる方へ接近した。

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