幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「……やっぱり、無理なのかな」
「俺はそう思う。別に、無理やり洸先生を嫌いになれとは言わない。でも、結婚してる人に正面からぶつかったって、相手にとっては迷惑なだけだろ」
「わかってるよ。でも、好きになった直後に結婚しちゃったんだもん。すぐに割り切れって言われても無理な話じゃん」

 仕事の話ではないどころか、完全に俺の話だ。しかも、かなり険悪なムード。

「だから、気持ちは割り切れなくてもそれを態度に出すのが問題だって言ってるんだ」
「偉そうに説教しないでよね! 自分だって、私が洸先生に失恋するの待ってるハイエナのくせに」
「……小森」

 これまで彼女に強く出ていた竜崎先生が、つらそうな声になる。やはり、彼は小森さんを想っているようだ。そんな彼に〝ハイエナ〟のひと言は、さすがに辛辣すぎる。

 彼女も言い過ぎたと思ったのか、ふたりの間に少しの間沈黙が落ちる。

 助け舟を出そうにも、俺が出て言ったら余計にややこしい状況になる気もして、柱の陰でしばし悩む。

「今度、洸先生にもう一回告白して……それでダメなら、あきらめるよ」
「……そうか。わかった。でも応援はしない」
「別にしてほしくない。他に話ないなら、私、もう仕事戻るから」

 小森さんがそっけなく言った後、スタスタと彼女の足音が離れていくのが聞こえる。

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