幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「洸先生を呼んでくれって言われたんだけど……仕事の話じゃないらしい。断ろうか?」
兄はそう言ってオフィスの出入り口を見やる。そこには、看護師の小森さんが神妙な面持ちで立っていた。
……もしかして、もう一度告白するというあれか。
彼女のためにも、きちんと振るのが礼儀というものだろう。竜崎先生や美葉も心配しているだろうしな。
「大丈夫だ。行ってくる」
心配そうな兄にそう答え、俺は小森さんのもとへ向かう。彼女に連れられてやってきたのは、あまり人気のない非常階段だ。
ある程度心の準備をして、彼女と向かい合う。小森さんは意を決したように、大きく息を吸った。
「私、やっぱり洸先生が好きなんです。でも、愛人になりたいわけじゃありません。本気で私を選んでほしいんです」
本当は好きでもなんでもない俺にそこまで言えてしまうほど、彼女は自分の母親に恩を感じているのだ。親に感謝する気持ち、それ自体は理解できる。
しかし、だからといって、彼女のしていることが正しいとは到底思えない。
どちらにしろ、俺が心に想う人はひとりだ。