幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「時間あるなら、屋上庭園にでも行きますか?」
「……ああ」
洸はスッと立ち上がると、白衣を翻してスタスタとオフィスを出ていく。私はおにぎりの入った袋を手に提げ、彼の背中を追いかけた。
屋上に出ると、春らしいぽかぽかとした晴天が広がっていた。
忙しい日は病院にこもりきりで天気も知らずに一日が過ぎることもあるけれど、余裕がある日は時々休憩でここを利用する。
病院スタッフだけでなく患者さんやそのご家族も自由に出入りすることができ、車いすでも散策できるように、段差はスロープになっている。
おにぎりのお礼にと彼が自動販売機でペットボトルのお茶を買ってくれて、日当たりのいい適当なベンチに腰を下ろす。
並んで座る洸との間に、おにぎりの入った袋を置いた。
「洸先生はなににします?」
「雪村先生が好きなものを先に取って。俺はその残りでいい」
「でも、好物のイクラが入ったおにぎりもありますよ」
「えっ」
洸の目の色が変わった。私はふふっと笑い、袋の中からイクラおにぎりを取ると彼に手渡した。