幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
美葉はたくさんのモニターを前に、患者のバイタルサインが悪化しないかジッとモニタリングしている。
必要があれば薬剤を追加し、患者――今回で言えば小森さんの母親が少しも苦痛を感じることのないよう、きめ細やかに対処していく。
先ほどのような不安は、もうないようだ。私生活だけでなく、オペにおいても、彼女は頼もしい相棒だと思う。
順調に進行したオペは出血量も少なく、目標としていた時間よりも早く終了できそうだった。俺が糸結びをはじめとするオペの練習を欠かさないのは、こうして手術時間を短縮し、患者の負担を軽くできるからだ。
「速い……」
器械だしの看護師がぽつりと呟いた直後、俺はひと思いに糸を切る。
「吻合完了。血流確認」
血流を評価する機械を用いて、その波形を見る。万が一結果が悪ければ、吻合のやり直しをしなければならないこともある。
「……よし。問題ないな」
最も神経を使う工程が済み、気持ちに余裕を持ってその後の作業をこなしていく。患者の容体は最後まで安定しており、危険な合併症を起こすこともなかった。
執刀を終えた俺は他のスタッフより先にオペ室を後にするが、美葉はまだ患者のそばを離れられない。
てきぱきと手術後の雑務に勤しむスタッフの目を盗み、俺は彼女にねぎらいの言葉をかける。