幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「お疲れ。雪村先生のおかげでやりやすかった」
「こちらこそ。洸先生に最初に活を入れていただいたおかげで、オペに集中できました」
お互いふっと微笑みを交わし、オペ室を出る。
それからお母さんの無事を願っている小森さんにオペの成功を報告するため、幾分早足で患者家族用の待合室へ向かった。
その日は昼間のオペの記録をつけたり、たまっていた仕事を片付けていたらすっかり遅くなってしまった。気が付けば心臓血管外科に残っている医師は俺だけで、腕時計を確認すると午後八時を回っていた。
慌てて帰り支度をしていたら、廊下からひょこっと誰かが室内を覗く。
「洸先生」
軽く手を上げてはにかんでいるのは、俺の大切な大切な妻だった。部屋に誰もいないのを確認すると、室内に入ってくる。
「美葉もまだ帰ってなかったのか」
「うん。もしまだ洸もいたら一緒に帰ろうかと思って覗いてみた」
「なんだよそのかわいい行動……」
俺たちの他に誰もいないのをいいことに、心の声をそのまま漏らす。美葉はおかしそうにふふっと笑った。なんだか機嫌がよさそうだ。