幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
断らないなんて選択肢はあり得ないが、なんと惜しいことをしたのだろう。美葉が俺のことで他人に対して感情的になるシーンは、そうそう見られないレアなシーンなのに。
「……でも、うれしかった」
後悔に苛まれる俺の横で、美葉がぽつりと呟く。
「うれしかった?」
聞き返すと、彼女は穏やかに微笑んだ。
「だって、『物心ついた時からずっと、彼女以外は目に入らない』――だなんて。私がいないところでも洸の愛情は変わらないんだって実感して、なんだか胸がいっぱいになっちゃった」
美葉は小さく笑った後、辺りをキョロキョロ見回す。そして、病院の周辺に誰もいないのを確認すると、遠慮がちに俺の手を握ってきた。
彼女から手を握ってくれるなんて、大人になってから初めてではないだろうか。感激するとともに、照れたような美葉の横顔に心臓がギュッと鷲掴みにされる。
「これからも、永遠に変わらないよ。俺の人生には美葉がいないと意味がないんだ」
俺はそう言って美葉の華奢な指先を、今度は俺からしっかりと握り直す。
「洸……」
「だから絶対に離さない。美葉はもう、全部俺のだから」
「……うん。ありがとう」
俺たちはぴったり寄り添って、通い慣れた道を歩く。ふと見上げた夜空には、さっきよりたくさんの星が散らばっていた。