幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「どこ行っちゃったんだろう……もうすぐリハーサルなのに」
「トイレじゃないですか? 緊張して」
「あり得る……ごめん、ありがとう。とりあえず戻るね」
親族の控室に戻ってみるものの、やはり洸の姿がない。家族と言葉を交わしながら気を揉んでいると、数分でようやく彼が戻ってくる。
眩しいほどまっさらな白のタキシードに身を包んだ洸は、髪もきちんとセットされており、フォーマルな雰囲気。見つめるだけでドキドキしてしまうほど似合っているが、今はなんだか微妙な表情をしている。
「どこ行ってたの?」
「……いや、兄貴にやられた」
そう言って、洟を啜った洸、よく見ると、目や鼻の頭が赤くなっている。
もしかして泣いたのだろうか。
「章くん?」
「ああ。あんなの……泣くに決まってる」
それ以上は語らない洸だが、兄弟の間でなにか感動的なやり取りでもあったのだろう。
ゆっくり話している時間もないし今は深く聞かないことにして、間もなく始まるリハーサルに備えた。