幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

『うわぁぁん、魚、こわい~~!』
『おじさん! 洸は怖がりなんだから、嫌がることを無理にやらせちゃダメ!』

 先ほどのようにわんわん泣く洸と、カメラを持つ院長の前で仁王立ちする、ちょっぴり生意気な子どもの私。

 新郎新婦が幼い頃の心和む映像に、会場からは温かい笑い声がいくつも湧き起こる。

 隣では洸が独り言のように、『やっぱりみよちゃんはカッコいい』と呟いた。


 洸の赤ちゃんを妊娠しているとわかったのは、翌年の夏。

 なんとなく体調が優れないと思いながらも、熱はないし他に目立った症状がなかったのでいつも通り病院で働いていたら、貧血で倒れてしまったのだ。

 私自身は大袈裟だと思ったものの院長の計らいで特別個室へと運ばれ、血液検査を行った結果、妊娠が判明したというわけだ。

 仕事のことで不安がないとは言わないけれど、素直に嬉しかった。洸の愛情がますます加速しそうで、ちょっと怖くもあるけれど。

「美葉っ……」

 手術の執刀を終えた後で、職場の誰かに私が倒れたことを聞いたのだろう。特別個室に駆けつけてくれた洸は、スクラブ姿のままだった。

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