幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 妊娠も出産も、その後の子育ても簡単なことではないと思うけれど、洸と一緒ならきっと大丈夫。彼の大きな手の温もりが、私にそう思わせてくれた。

「ありがとう。元気な子を産めるように頑張るね」
「うん。……あー、これじゃ結局仕事が手につかないな。うれしすぎて、誰彼構わず妻が妊娠しましたって報告しちゃいそうだよ」
「そ、それは安定期まで耐えて……! とくに、八家先生には絶対バレちゃダメ」
「了解。結婚式のスピーチであれ言っちゃう人だもんな」

 苦笑した彼にもう一度だけ「口を滑らせないでね」と念を押し、仕事に戻っていく背中を見送った。


 赤ちゃんをこの身に宿してから十月十日(とつきとおか)、ますます過保護になった洸のサポートもあり、私は大きなトラブルなく出産までの日々を過ごし、無事に赤ちゃんを出産した。

 性別は女の子で、春らしくとても暖かな日に生まれたので心暖(こはる)と名付けた。

 リビングの一番日当たりのいい場所にベビーベッドを置いて始まった、心暖中心の生活。 

 心暖はとてもかわいいし、赤ちゃんを無事に家族に向かえた幸せはもちろん感じているのだけれど、私は産後三カ月が経っても思うように体が回復していなかった。

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