幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「私、母親失格だよ……」
言葉にすると同時に、ぽろっと涙がこぼれた。
こんなこと言われたって洸だって困るのに。早く、心暖を病院に連れて行かなければいけないのに……。
「美葉」
俯く私と目を合わせるように、洸が身を屈める。それでもますます下を向こうとする私の頬に両手を当てると、洸はまっすぐに私を見つめた。
「病気は誰のせいでもない。美葉ならよく知ってるだろ」
「わかるけど、でも……」
「大丈夫。美葉はれっきとした心暖のお母さんで、その責任感がきちんとあるから悩むんだ。でも心暖の親はひとりじゃない。俺もいるんだからつらい時は俺に頼ればいい。それで、昔美葉に頼りすぎてた恩を返させて」
「……洸」
弱気な私の心に寄り添ってくれる優しさが胸に染みて、ますます涙があふれてしまう。
昔の恩なんてとっくに帳消しになるくらい、私の方が支えてもらっているのに――。
「ほら、行こう。ちゃんと診てもらって体が元気になったら、きっと心も元気になるから」
「うん……ごめ……じゃなくて、ありがとう」
「どういたしまして。みよちゃん」
いつもの『みよちゃん』は、洸自身が甘えたい時に発せられることが多いけれど、今日は、私を甘えさせてくれるために、あえて言ってくれたのだろう。
優しく穏やかな響きに、ささくれていた心が優しく包み込まれるのを感じる。
体調が悪いのはどうしようもないし、自分を責めてもしょうがない。
洸の言う通りちゃんと病院で診てもらい、心暖のお世話は洸にお願いできる部分はして、元気になったらまた頑張ろう。