幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
クールを装う熱い恋――side洸
全身麻酔で眠っている患者を前に、俺は淡々と手を動かしていた。僧帽弁の変性部位をよく観察し、正常な形に戻すべく、切除、縫合を進める。
弁の機能が回復しているのが確認できれば、人工心肺から離脱し患者自身の心臓を動かす。心電図モニターが刻む音は終始規則的で、呼吸も安定していた。
五時間はかかると予想していたオペだったが、一時間ほど短縮できそうだ。
胸を閉じる前に、オペナースと協力してガーゼカウントを行い、術前の数としっかり合っているか確認する。
体の中にガーゼを残したままでは感染などの原因になり、再び取り出すための手術をしなければならないからだ。
「持針器」
問題がなかったので、縫合に使う器具を看護師に要求し、開いていた患者の胸を閉じる作業に移る。ここまでくれば急変の心配もほとんどない。
今回のオペでは看護師たちも優秀だったが、麻酔科医が手術の経過とともに薬剤を追加するタイミングがとくに絶妙だった。
まだ専門医になって日が浅いのに、手術中に慌てたり怯えたりするそぶりも一切ない、頼もしい女性の麻酔科医。