幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
バイタルを管理するモニターに囲まれた彼女の方をちらりと一瞥し、心の中で拍手喝采を送った。
……さすがは美葉。
しかし、もちろん顔には出さないし、手元ではてきぱきと縫合作業を続ける。
「メッツェン」
最後に手術用のはさみで手術創を縫った糸を切り、小さく息をつく。
「完了です。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
挨拶をしてオペ室から引き上げる執刀医の俺に対し、美葉はその場に残る。患者の口から人工呼吸器の管を抜いたりするほか、全身状態を引き続きチェックするからだ。
麻酔が代謝され患者が目を覚ましたら、手術室から病棟へと移動する。
手術中は頼もしいサポートありがとう。美葉がいたから頑張れた。
素直にそう言って微笑みかけたい気持ちをこらえ、彼女とすれ違うタイミングでひと言だけ告げる。
「お疲れ」
「お疲れさまです。さすがでした、洸先生」
そう言って、美葉がニコッと笑う。帽子とマスクでほとんど顔が隠れていても眩しいその笑顔に、俺の胸は完全に撃ち抜かれる。