幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
ああ、かわいい。手術中、極力彼女の方を見ないようにしていて正解だった。
「……別に大したことない。それより、今日仕事終わったらうちのオフィスに寄って」
「はい。わかりました」
名残惜しい気持ちを胸にしまい、無表情で彼女のそばを離れる。しかし、オペ室のドアを出たとたん、少しだけ不安が湧いた。
ぼろは出してない、よな……?
彼女の前では本来の俺を隠し、クールに変身した幼なじみ〝高比良洸〟でいなければならない。
彼女はあまり感情を表に出さない大人っぽい男が好みなのだから、どうあってもこのキャラを貫き通すのが俺に課せられたミッションだ。
……たとえ、結婚してひとつ屋根の下で暮らすようになったとしても。
その日は運よく予定外のオペが入ったりすることはなく、六時すぎにはほとんど仕事が終わっていた。しかし、俺は美葉にあるものを渡すため、帰るわけにはいかなかった。
自分のデスクで仕事をするふりをしつつ、仕事用のバッグに手を入れて茶封筒を取り出す。そして、気合いを入れるように深呼吸した。