幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
大人になり、心臓血管外科医として少しは胸を張れるようになったら、絶対にこうすると決めていた。これまで彼女が男に縁がなかったのも、すべてはこの日のための準備だった。
長い間寂しい思いをさせてごめん。美葉のことは、俺が必ず幸せにするから――。
「失礼します」
オフィスの出入り口で、美葉の声がした。失礼します、の「し」が聞こえた時点で、彼女の声だと認識できた。
よく通る朗らかな声。聞き慣れているはずなのに、心臓が高鳴る。
「洸先生」
俺はにやけそうになる頬を引き締め、むしろ不機嫌そうな顔を作って振り向く。そこには予想通り美葉がいた。
これから帰るところなのだろう。すでに白衣を脱いでおり、ベージュのパンツスーツに姿だ。インナーの白いニットは胸元が広めに開いており、綺麗に浮き出た鎖骨が色っぽい。
他の男が注目しないか心配で軽く周囲を窺ってから、俺は茶封筒を持って立ち上がった。
「呼び出して悪い。これ、渡したかっただけ」
「封筒? 中身はなんなんですか?」
「……雪村先生が欲しがってたもの」
「えっ?」