幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 心当たりがないというようにきょとんとする美葉。

 ちゃんと説明してあげたい気持ちもあるが、今の俺はクールな大人の男なのである。

 サラッと渡して自分はその場から去り、後でドキドキさせる……そういうサプライズを演出するのがベストだろう。

「じゃ、俺は気になる患者がいるからこれで」

 本当は彼女と一緒に帰っても問題ないのに、忙しさを装って美葉の脇をすり抜ける。

「えっ? あのこれ……」

 まだなにか言いたそうな彼女をわざと無視して、俺はオフィスを後にする。

 そして緊急のオペがあるかのごとく手術室の方へ向かい、オペナースたちが働く手術部のナースステーションに寄り、カルテを見るふりをしてパソコンの前で物思いにふけった。

 ……今頃びっくりしている頃だろうか。夫の欄は記入済みの婚姻届を、いきなり渡されて。

 美葉の反応を想像すると、心臓が早鐘を打つ。

 しかし、これ以上あのかわいくて魅力的な幼なじみを自由に泳がせておくことなんてできそうにない。早く自分のものにして周囲をけん制したいし、物理的にそばにいたい。

 もちろん、昔のきょうだいのような関係ではなく、男と女として――。

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