幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
しかし、当時からもちろん美葉ひと筋だった俺は、そのすべてに冷たく『NO』を突きつけてきた。美葉以外の女性から嫌われたところで、痛くも痒くもない。
そのうち〝無感情の天才外科医〟と周囲がコソコソ噂するようになると、俺は内心うれしかった。美葉好みのクールな男に一歩近づけたような気がしたのだ。
「断る」
今回もバッサリそう告げて、パソコンに向き直る。
「わかりました。今日のところは諦めます」
「……今日のところは?」
小森さんの言葉に反応し、思わず眉根を寄せて彼女を見る。その顔はいたずらっ子のように微笑んでいて、まったくめげる様子がない。
「まだ名前と顔を覚えてもらったばかりなので、断られて当然だと思います。またオペでご一緒することもあるだろうし、これから頑張ります!」
どうやら打たれ強い女性らしい。とはいえ頑張られても迷惑なだけなので、俺はわかりやすくため息をついた。
「周囲の同僚に変な誤解をされたら困る。今後も仕事以外できみと関わることはない」
「そんなぁ……。あ、もしかしてこの病院にお付き合いされている方がいるとか?」
彼女はどこまで人のプライベートに踏み込んでくるのだろう。これだから、〝ファン〟を自称して近づいてくる女性は苦手なのだ。