幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「ああ。近々結婚する」

 詳しい事情を説明するのも面倒なので、端的に答えた。

 まだ一方的に婚姻届を渡しただけだが、承諾してもらう自信ならある。恋人のような甘い関係になったことはなくても、俺と美葉は固い友情で結ばれている。

 信頼関係の土台がしっかりとできているから、彼女が心を許してくれる日も近いだろう。

「結婚……そう、なんですね」
「わかったなら、くだらない話は終わりにして仕事に戻って」
「……はい」

 小森さんはようやくあきらめてくれたのか、意気消沈した様子でナースステーションから出ていく。ホッとしていると、背後からまた誰かの足音と気配が近づいてきた。

「嘘はいけないなぁ、洸」

 至近距離でボソッと囁かれ、思わずびくりと肩を揺らして振り返る。

 そこには、白髪をオールバックにした背の高い紳士――この病院の院長である俺の父、高比良(じょう)がいた。

「父さん。なんでここに」
「そんなに迷惑そうな顔をしなくたっていいだろう。うちの病院に来て初めてのオペを無事に成功させた息子を労いに来たんだ。心臓血管外科に行ったら姿が見えないもんだから探したよ」

 ……面倒な人が来た。家族なので当然だが、父は俺の本性が決してクールな男ではないと知っている。

 さらに、幼い頃からずっと美葉に片想いをしていることも――。

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