幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「べ、別に嘘をついたわけじゃ……」

 軽く動揺して目を泳がせる俺の肩を、父がグイッ抱く。それから周囲に聞こえないよう、小声で囁いた。

「そりゃ、私だってあの美葉ちゃんがお嫁に来てくれたらうれしいさ。しかし、お前のような甘ったれを彼女が結婚相手に選ぶかねぇ」

 痛いところを突かれた俺は、クールを装うのを一瞬忘れて父を睨みつけた。

「昔の俺とは違う……! 今日はオペだって一緒に成功させたし、結婚についてだって前向きに話を進めてる」

 売り言葉に買い言葉で、事実というより俺の願望が口をついて出た。

 いずれ実現させるのだから、問題ないだろう。

「本当か? 洸」
「……ああ」
「それなら、近々帰国する(しょう)にもいい報告ができそうだな。アイツはお前のことも彼女のこともかわいがっていたから喜ぶだろう」

 父の口から飛び出した人物の名に、耳がぴくりと反応する。

 高比良章――三つ年上の兄の名だ。俺と同じ心臓血管外科医で、海外で自分の腕を試している最中。今はアメリカにいるはずだが……。

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