幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「貴重な情報サンキュ。じゃ、俺は帰るから」
「おお。章が帰ってきたら、美葉ちゃんもうちに呼んでみんなで食事でもしよう」
「……予定が合えばな」
本音を言えば兄貴と美葉を会わせたくないが、それを父に言うのはさすがに大人げないと思ったので口にはしなかった。
高比良総合病院での勤務が決まって新しく借りた新居は、病院から徒歩五分の便利な場所にある。
緑豊かな公園の隣に立つ、地上四階建ての低層レジデンス。その最上階にあるメゾネット物件だ。
美葉と暮らす将来を見据えて借りたため、ひとり暮らしにしては広い五十坪の3LDK。リビングの階段から出られる屋上には、開放的なジェットバスの浴槽が備え付けられている。
仕事で多忙な美葉を癒やしてやりたいという純粋な気持ちの他に、甘い新婚生活を堪能したいという下心も、ないとは言えない。
……が、すべては婚姻届にサインをもらわなければ始まらない。
帰宅後、広すぎるリビングのソファにドカッと腰かけた俺は、スマホを取り出して美葉に電話しようかどうか思案する。