幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
美葉はすっかり前向きな気持ちになってくれたらしい。
この雰囲気なら、兄の章が帰国するより前に結婚が叶いそうだ。少し冷や冷やしたが、間に合ってよかった。
「婚姻届の記入、よろしくな」
『わかった。院長とお母様にも改めてご挨拶しなきゃだね。なんか緊張しちゃう』
「今でも同じマンションのご近所さんだろ」
『そりゃそうだけど……まさか、洸のお嫁さんとしてご両親に会う日が来るなんて想像してなかったから』
それが彼女の素直な感想なのだろう。美葉と俺との間にある温度差を改めて突き付けられたようで、切なさに胸が軋む。
俺は、子どもの頃も学生の頃も、ずっと美葉と結ばれるのを夢見ていた。
彼女を大切な人として家族に紹介することも想像したし、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすことだって何度シミュレーションしたかわからない。
だからといって、独りよがりにいじけている場合ではない。結婚生活を通して、必ず彼女と両想いになってみせる。
俺は結婚前に必要なタスクについてあくまでクールに美葉と相談しながら、胸の内では熱い炎を燃やしていた。