幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「洸、あまり顔色がよくないみたいだけど大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「本当だな。帝応大からうちの病院に来てすぐにフルで働いてもらっているからな。そろそろ疲れが出てきたのかもしれない」
本人は否定したが、洸の顔を覗いた高比良院長が心配そうに眉を曇らせた。隣に座っている母が、横からポンと私の肩に手を置く。
「酔い覚ましに少し外をお散歩して来たら? 美葉も一緒に」
「そうする。行こう、洸。私、あの八重桜もっと近くで見たかったの」
「美葉……。ご心配おかけしてすみません。それでは少し席を外します」
腰を上げた洸は、私の両親に深々と頭を下げる。父も母も、そんな彼に優しい微笑みを向けた。
「これから私たちも親子になるんだから、気を遣わないでくれ。ゆっくりふたりで話してきなさい」
「デザートはちゃんと取っておくからね」
家族に温かく送り出され、私と洸は個室から廊下に出る。
襖を閉めて靴箱の方へ歩き出そうとすると、洸の手がきゅっと私の服を掴んだ。
彼がまだ私を『みよちゃん』と呼んでいた頃、よくしていた仕草だ。
「洸?」
「……ごめん」
長い睫毛を伏せてしゅんとする姿も、まるで昔の洸に戻ったみたい。私は自然と、背の高い彼の頭上に手を伸ばしていた。