幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「ううん、昨日仕事だったんだし疲れてて当然だよ」
当時そうしていたように、洸の頭を軽く撫でる。
子どもの頃からサラサラの髪がそのままだ……なんて思いながら触れていたら、洸が唐突に真っ赤になって、サッと身を引いた。
もしかして嫌だった……?
「ご、ごめん。つい昔の癖で」
「いや、別にいいんだけど。……そろそろ、外に行こう。桜見るんだろ?」
私と目を合わさずにそう言った洸は、スタスタと先を歩いて行ってしまう。
今の、どう見ても嫌がってたよね。
洸はきっと女性とこういう親密な空気になるのが面倒で私との友情結婚を選んでくれたっていうのに、いきなり境界線を踏み越えるようなことをしてしまった。今度から気を付けなくちゃ……。
幼なじみから婚約者へと発展した私たちだけれど、プライベートの接し方についてはまだ手探り状態。
とりあえず、考えなしに触れるのはやめよう。
洸の背中を追いかけ、彼が振り向いたところで『ごめん』と言おうとしたその時。洸がスッと手を差し伸べ、私の手を取った。
「えっ」
この手はいったい……?
呆気に取られているうちに、指を絡めてギュッと握られる。人生で初めての恋人繋ぎだ。
相手は幼なじみだとわかっていても、勝手に頬が熱くなってくる。