幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「都会の真ん中で空を見ながらお風呂に入れるなんてすごいね。でも、冬はヒートショックを起こさないように気を付けないと。お酒飲んだ後は絶対にダメだね」
「ずいぶん現実的だな」
「だって医者だもん。冬はただでさえ寒さで血圧が上がるの、洸だってよく知ってるでしょ」
「それは……そうだけど」
私が夢のないことを言ったからだろうか。洸がなんだかしょんぼりしてしまい、もしかしたら彼にとってはこの物件のお気に入りポイントだったのかも、と気づく。
屋上風呂が楽しめるのは最上階の住人だけなので、それが決め手で契約したかもしれないのに。
「こ、子どもの頃だったらめちゃくちゃテンション上がったかも! ちょっとした温水プールみたいで」
「……俺、泳げなかったけどな」
フォローのつもりで話の矛先をずらしたはずが、洸はますます元気をなくしてしまった。
そういえば、家族ぐるみで一緒にプールに出かけると、洸はいつも浮き輪持参でぷかぷか浮いていたっけ。
「でも、今は泳げるでしょ。中学の時に特訓したから」
「……ああ。それについては感謝してる」
小学生の時はカナヅチのままでも大丈夫だったけれど、中学では二十五メートルを泳ぎきる実技テストがあった。
洸がどうしてもそれに合格したいというので、放課後になると近所の公営プールにふたりで通い、猛特訓した。