幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
小森さん、洸のことが好きだったの? ……いや、むしろ現在進行形?
私と洸はまっとうな恋愛をして夫婦になったわけじゃない上、これからも恋愛する予定はないので、なんとなく罪悪感が湧く。
両家の顔合わせの日、八重桜の咲く庭園で思いがけず抱きしめられたのも、友情の延長みたいなものだし……ラブラブエピソードなんてあるわけがない。
小森さんのまっすぐな視線にたじろぎつつ、必死で彼女を納得させる材料を探す。嘘をつくのも気が引けるので、とりあえず事実をそれらしく伝えることにした。
「洸先生とは子どもの頃からの付き合いなの。実家のマンションが一緒で、親同士も親しくて」
「なるほど。幼なじみってやつですか」
「そう。高校までは学校も同じで、いつも一緒にいた。お互いのいいところも悪いところも全部知ってるから、元から家族みたいな感じだったんだよね」
これで、納得してくれるだろうか。私と洸の友情の歴史は、だいたいこんな感じだと思うのだけど……。
「……わかりました」
小森さんが静かにそう呟いたので、ホッと胸をなでおろす。
幼なじみが結婚相手って、実はこういう時に便利かも。具体的なエピソードをわざわざ話す必要もなくて。
しかし、今の話を聞いて小森さんが洸のことをあきらめてくれたのかどうかまでは判断がつかない。