幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「お仕事中にすみませんでした。失礼します」
「お疲れさま」
小森さんは私のもとを去り、そのまま麻酔科のオフィスを後にする。チラチラとこちらを窺っていた専攻医の竜崎先生は、少し迷った後で小森さんを追いかけて廊下に出て行った。
彼と小森さんは年が近いから、仲もいいのかもしれない。フォローは彼に任せて、私は仕事に集中しよう。
職場への結婚報告も、オペナースからの追及も無事クリアした私は、ようやく平常心を取り戻してパソコンと向き合った。
平日は洸も私も仕事が忙しく、時間が合えば夕食を一緒に取ったりするものの個々で独立した生活が続いていた。
間もなく大型連休に入るけれど、外来の診察や計画的な手術がないだけで、患者さんは病院にいるし、避けられない緊急手術は行われる。
当直やオンコール対応もあるので心置きなく休めるのは二日間。偶然洸も同じ日に休みのようだけれど、『野暮用』があって出かけるらしい。
その話をした時の洸はなんとなく不機嫌そうだったので、具体的にどんな用事があるかまでは深く聞かなかった。
だから、その連休は私ひとりで休日を謳歌しようと、空いた時間に色々と準備を進めていた。