幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「雪村先生」
「はいっ」
誰かに名前を呼ばれ、ハッと我に返る。振り向いた先には、なぜか頭に思い描いていた人物……幼なじみの洸が立っていた。
結婚式の日にはきっちりセットされていた髪はナチュラルに下ろしてあり、白シャツにブラックデニムという、シンプルでラフな格好をしている。
「え。洸……? なんで? 勤務は来週からじゃ……」
「そうだけど、病院の雰囲気とかいろいろ見ておきたくて」
ふいに現れた彼についドキッとしてしまったが、仕事の事前準備で病院を訪れただけのようだ。なんとなくホッとして笑顔を向ける。
「そっか。あ、お昼ご飯は食べた? ここ座る?」
隣の席が空いていたので、軽く椅子を引いて尋ねる。洸は少しも表情を変えずに、軽く首を左右に振った。
「いや、午後は新居の鍵の受け取りがあって時間がないんだ」
「慣れるまで実家のマンションから通えばいいのに、さっそく部屋借りたんだ」
「ああ。もう親に甘える年齢でもないしな」
「だよね……。私もいい加減出て行かなきゃなぁ」