幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
これしきのことで取り乱したくはないのに、微かな苛立ちが胸の中でくすぶる。
俺の神経を逆撫でしたのは、先ほどのメッセージの中でにあった『昔とは立場が逆転したみたいだな』――というひと言。
昔は美葉に甘える存在だった俺を、馬鹿にされているように感じたのだ。
だいたい、どうして日本に帰ってくるのだろう。俺の長年の片想いがようやく実を結びそうな、このタイミングで。
俺と美葉が結婚したことは、つい最近連絡を取り合ったらしい母から兄に伝わっている。【美葉と結婚したんだって? おめでとう】というメッセージも本人から届いた。
帰国の予定はその前から決まっていたから、偶然だとは思いたいが……兄は昔から飄々としていて、なにを考えているのかよくわからない。
もしかしたら、俺と美葉の結婚を知ったことで、兄の中に眠っていた美葉への想いに気づいたとかそういうパターンの可能性も……。
悪い方へと妄想が広がりかけていたその時、ハッと我に返ってため息をつく。
「……俺、全然大人になれてないな」
見た目や普段の言動だけでなく、こんな時に余裕に振舞えてこそ、大人の男だと思う。
なのに俺ときたら、兄に嫉妬して、八つ当たりして……内面は美葉に守られていた甘ったれの俺から進歩してないじゃないか。