幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
『洸? 確かにいつも一緒だけど……かわいくて弟みたいな存在だよ』
高校時代に偶然美葉がそう話すのを盗み聞きしてしまった、ショッキングなシーンが脳裏によぎる。
あれは、高校三年の一学期。進路についての希望を問われる書類が学校から配られ、同じ学年の皆が将来について考え始めていた。
俺と美葉は昔から医者になると決めていたため、目指すのは医学部。あとは大学をどこにするかだが、成績の良かった俺は指定校推薦を得られるかどうかの校内選考をすでにパスしており、その枠で帝応大学を受験することがほぼ決まっていた。
帝応大は俺の父、そして美葉のお父さんの母校でもあったからだ。
そんな経緯もあり、俺は美葉も帝応大を目指しているものだと勝手に思い込んでいた。
しかし、日々のたわいない会話の中で、彼女が北陸地方の国立大学を目指していることを知る。
当時すでに麻酔科の専門医になりたいと思っていた美葉は、その分野に秀でた教授の教えを受けられる大学を選んでいたのだ。
自分の将来のために大学を選ぶのは当然と言えば当然。しかし、美葉がいない生活などまったく想像していなかった当時の俺は焦った。