幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
しかし、その直後――。
『でも、美葉にはほぼ彼氏みたいなのいるじゃん。三組の高比良くん』
突然自分の名前を出され、心臓が口から飛び出しそうになる。教室に入ろうとしていた足を一度引っ込め、ドアの陰に身を隠す。
『洸? 確かにいつも一緒だけど……かわいくて弟みたいな存在だよ』
ずきり、と胸に深い痛みを覚えたのはその時だ。
幼い頃から特別に想っていた女性が、自分を異性として認識していない。
それどころか弟って……最も恋愛対象から遠い存在じゃないか。
『えーっ。付き合っちゃえばいいのに、もったいない。高比良くんっていつもテストの成績上位だし、顔面偏差値も高めじゃん』
『もちろん洸のことは好きだよ、幼なじみとして。でも、私はもっと冷静で大人っぽい人に憧れちゃうな。洸のお兄さんがちょうどそんな感じなんだよ』
自分が彼女の恋愛対象ではないどころか、彼女の憧れが肉親の兄であると知って、俺はすさまじく嫉妬した。
もちろん美葉に悪気がないのはわかっている。俺が彼女の恋愛対象から外れてしまったのも、彼女の好きなタイプ、どんな恋愛をしたいのかなど、そういうことを何も考えてこなかったせいだ。
彼女と一緒にいたいという自分の気持ちを優先し、犬みたいに彼女を追いかけ回すことしか能がなくて……。
思考が負のループに陥りそうだった俺は結局美葉に声をかけず、そのまま教室を離れた。