幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
『俺自身がクールな大人の男に生まれ変わる……とか』
思い付きをただ口に出しただけだが、目が覚めたような思いがしてパッとまぶたを開けた。
美葉をあきらめるわけでも困らせるわけでもなく、自分の至らない部分を直し、彼女に相応しい男になる努力をする。
……これだ。一番健全なこの考えが、どうして先に思い浮かばなかったのだろう。
俺はさっそく翌日の朝、マンションから一緒に登校する彼女に宣言した。
『……あのさ』
『うん』
『今日からみよちゃんって呼ぶのはやめて、美葉にする』
呼び方を変えたくらいで内面まで変わるわけではないけれど、形から入るのも大事だ。
クールな男は絶対に『みよちゃん』とは口にしない。
『急にどうしたの? 洸。なんからしくないけど』
『べ、別に……気分』
『ふうん。まぁ、呼び方なんてなんだっていいけどさ』
俺の心境など知る由もない美葉は、深くは突っ込まず『それよりさー』と別の話を始める。
もう少しなにか感想を聞きたかった……と思ってしまう俺にとって、クールな男になる道のりはかなり険しそうだ。
変身計画の序盤でそう感じた通り、その日から修業の日々だった。