幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
『――あなた方に、お願いがあります』
本当にクールな男なら、離れていても平気な顔をして彼女の帰りを待つのだろう。しかし、美葉に他の男が近づくかもしれないと思うと、俺は大人しくなんてしていられない。
そんな思いで、俺は美葉の友人数人に、監視の役割を依頼するのだった。
その根回しが功を奏したのか、大学在学中の美葉に恋人ができることはなかった。
彼女はそのまま出身大学の附属病院で初期研修を終え、後期研修に入るタイミングで、東京へ戻ってきた。
麻酔科医の認定を取るため、多くの症例を経験できる高比良総合病院で経験を積むためである。背中を押したのは、他でもない俺だ。
【うちの病院なら麻酔科学会の認定施設だ。必要な診療科も全部そろってるし、美葉の実家からも通いやすい。ご両親も安心するんじゃないか?】
親切を装ってメッセージを送ったが、本当は美葉のご両親のためではなく、俺が安心したいだけだった。
俺自身も心臓血管外科医の専門医認定を取るために帝応大学病院で多忙な日々を過ごしていたから、美葉には少しでも近くにいてほしかった。
社会人になった彼女のプライベートを制限することはできないが、たとえば女性に手が早いナンパな医師がいたとして、美葉が狙われているなんて噂が病院内にあれば、父の耳にも届く。
幼い頃から我が子同然にかわいがってきた美葉のこととなれば、父も彼女を守る方向で対処するだろう。美葉のご両親に顔向けできないようなことはしないはずだ。