幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
【ありがとう。他の病院とも比較検討してみて、しっかり考えるね】
俺の下心には気づかず、素直に感謝してくれる美葉。
彼女はその後、自分の目標を叶えるため、俺の思惑通りに高比良総合病院で専攻医としての経験を積むことを選んだ。
そして、俺は心臓血管外科の専門医に、美葉は麻酔科専門医になるためにひたすら勉強しながらオペの経験を積み、三十歳を過ぎてようやく一人前になれた。
その間、美葉と物理的に離れていたおかげか自然にクールな所作をマスターしていたらしく、帝応大学病院では『無感情の天才外科医』なんて異名もつけられた。
美葉に相応しい男になるための修行は長く苦しかったが、これで堂々と彼女に会いに行ける――。
神の啓示なのか、ちょうど同じタイミングで美葉と共通の友人の結婚式があり、彼女と一緒に参加することになった。
男として、とうとう勝負をかける瞬間がやってきたのは、その日の帰り道だ。
結婚式を見てきたせいもあるのだろう。美葉はどこか感傷的になっていた。
麻酔科医としては順調にキャリアを積んでいる彼女だが、これまでさっぱり男に縁がなく、結婚願望が募っているというのだ。