幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
出発前に彼女がお気に入りの音楽をかけたいと言うので、こうして和気あいあいとナビを操作しているというわけだ。
「あ、聞こえてきた。これで道中のBGMは完璧だね」
無事にスピーカーから音楽が聞こえてくると、美葉が満足そうに笑う。
「ずいぶん懐かしい曲じゃないか?」
俺も知っている邦楽だが、最新の流行曲ではない。停まっていた車を動かしながら、鼻歌で軽くメロディーをなぞる。
「うん。うちらが高校の時の年代のヒットソング集にしてみた」
「……エモいな」
「でしょ?」
得意げに笑う美葉がかわいくて仕方ない。ただ一緒に車に乗っているというだけなのに、すでに楽しくて気分が高揚する。
兄には悪いが、引っ越しの手伝いよりこちらを選んで正解だった。
「本当は忙しかったのに、予定合わせてくれてありがとね」
「別にお礼言われるようなことじゃ……」
「ソロキャンプも好きだけど、自分の旦那さんと色々な場所に出かけて、素敵なものを見たり美味しいものを食べたりするの、なにげに夢だったの。洸のおかげでさっそく叶っちゃった」