幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 途中でランチ休憩を挟み、グランピング施設には午後三時頃到着した。

 ドーム型の部屋の中は写真で見るより広々とした印象で、設備はホテルとそう変わらない。ソファとローテーブルが並んだリビングスペースの隣に、セミダブルのベッドがふたつ。

 キッチンやバス、トイレも完備で、外のデッキにはバーベキューができる道具まで揃っている。

 こんなに充実した施設の予約をいとも簡単に取れたのには理由がある。俺がまだ帝応大の附属病院に勤務していた頃、手術で救った男性がここの経営者なのだ。

 他にいくつものホテルを経営している大物で、病院ではいわゆるVIP患者として特別個室を利用していた。

『高比良先生、この度は命を救っていただき本当にありがとうございました。我が八束(やつか)グループ系列の宿泊施設をご利用する際は、是非私にご連絡ください』

 手術後に無事回復したその男性――八束グループの社長は、そう言って俺の白衣にスッと名刺を忍ばせ、退院していった。

 その時は連絡することなどないだろうと思っていたが、今回はその好意に甘えさせてもらうことにした。

 電話越しの八束社長は『料金はいただきません』と言ったが、さすがにそれでは職権乱用になる。部屋を確保してもらっただけで十分ですと言って、料金は正当に支払った。

 とはいえ、こんな裏技を使ったとは美葉には内緒だ。

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