幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「ねえ、川の方へ行ってみない?」

 荷物の整理が済むと、美葉が窓から外を見て言った。

「ああ。賛成」

 近くを流れる清流にはヤマメやマスがいて、道具を借りれば釣りもできるそうだ。

 俺たちはとりあえず手ぶらで川の様子を見に行くことにし、爽やかな風を感じながら木立の中をのんびりふたりで歩く。

「美葉はソロキャンプが好きなくらいだから、本当は釣りもしたいんじゃないのか?」
「ううん、大丈夫。だって洸、魚にさわれないでしょ?」
「……よく覚えてるな。今は別に平気だけど」

 あまり名誉なことではないので、気まずく思いながら苦笑した。

 俺たちは小さな頃、お互いの家族と一緒にキャンプに行ったことがある。確か、俺と美葉がまだ小学生になる前だった。

 その時訪れたキャンプ場にも川が流れていて、浅瀬では子ども向けに魚のつかみ取りイベントを開催していた。

 初めての体験だったから、つかみ取りがどんなものかきちんと理解せずに、兄と美葉の後を追いかけるようにして俺も参加した。

 冷たい川の水に足首まで浸かる感触は気持ちよかったが、周囲を泳ぐ魚たちのヌルっとした感触がなんとも苦手で、兄や美葉が次々魚を捕まえる中、俺は一匹も掴むことができなかった。

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