幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
そんな俺を不憫に思ったらしいのが父だ。魚の入ったバケツに手を突っ込み、兄や美葉の取った魚のうちの一匹を、俺に渡そうとしてくれた。
『ほら、洸。掴んでごらん』
『……いい、大丈夫』
『こういう体験は自然の中でしかできないんだぞ。やってみろ、ほら』
そうしてなかば無理やり魚を手に持たされたのだが、父が持っている時は大人しかったその魚が、俺の手に移動した瞬間ぴちぴちと体を動かした。
びっくりするやら怖いやらで、俺はすぐに魚を手放し、尻もちをついて泣き出してしまう。
『うわぁぁん、魚、こわい~~!』
その時、すぐに駆けつけてきてくれたのが美葉だった。
俺の背中を優しくさすって、涙を拭くハンカチを貸してくれた上、お節介なことをした俺の父親に、抗議までしてくれた。
『おじさん! 洸は怖がりなんだから、嫌がることを無理にやらせちゃダメ!』
『いや~ははは、こりゃ参った。美葉ちゃんの言う通りだな。ごめんな、洸』
おどけて謝る父に周囲の大人たちも笑って、俺がぶち壊してしまった和やかな空気が戻ってくる。