幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
幼なじみ以上、夫婦未満

 ぱちぱちと炭が弾ける音を聞きながら、はふ、と肉を頬張って味わう。そこにビールを流し込むと、極上の幸福感が私を包み込んだ。

「美味しい~! 洸、天才」

 テーブルにビールの缶をコトッと置き、洸の料理の腕を褒める。

 私たちは部屋の外にあるウッドデッキで、グランピングのメインイベントといっていい、バーベキューを楽しんでいた。

「素材の勝利だろ。切って焼いただけなんだから」

 そう言いながら、絶えず肉をひっくり返しては私の皿にのせてくれる洸。口元に浮かべているのは控えめな笑みだが、褒められてうれしそうに見える。

「その〝切って焼くだけ〟ができない人もいるんですー」
「別にいいんじゃないか? 美葉が苦手なことは俺が担当すればいいだけの話だ。夫婦なんだから」

 諭すような落ち着いた声音で、洸が私に言い聞かせる。その時の表情はなんとも言えず大人びていて、鼓動がどきりと跳ねる。

 洸と同居を始めてから、度々私の心臓はこうなる。今日のグランピングに来てからはさらに、その頻度が増えていた。

 もしかして、ただの幼なじみであったはずの洸に〝男性〟を感じてる――?

 最近そう自問自答することも多く、胸が高鳴るたびに動揺をごまかしたくて昔の話を引っ張り出し、なんとか幼なじみの顔を保とうとしていた。

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