幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 今は手元にお酒もあるので、ついアルコールに逃げたくなって、飲むペースも早い。

「でも、洸は魚も血も克服しちゃったから、私の出番なくない?」
「あるよ、まだ克服できてないもの」
「えっ。なんだろう……。暗い場所?」
「違う」
「狭い場所」
「それも違う」

 なんだろう。洸のことなら大体知っているという自負があるから、なんとしてでも当てたいな。

 腕組みをしてしばらく悩んでいると、ふと、洸の背後で動くものが目に入る。ドームの外壁をとことこと歩いているのは、体長一センチほどの小さな蜘蛛だった。

 ――あ、絶対これだ。

「ねえ洸、後ろの壁におっきい蜘蛛が――」

 壁を指さして言いかけた瞬間、椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がった洸がこちらにやってくる。そのまま大きな体を丸め、私の背後に身を隠した。

 私の予想は大正解だったようだ。でも、なんだか悪いことをしちゃったみたい。

「……ごめん。そんなに大きくない」
「えっ?」

 おそるおそる目線を上げた洸が、見たくないものを見るように細めた目で、天敵の存在を確認する。その大きさを認識すると、安心したように息をついた。

 しかし、直後に恨めしげな目で私を見る。

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