私の理想の王子様
　今日は二ヶ月ぶりに須藤と食事に行く予定なのだ。

「はーい。気をつけて」

「楽しんできてね」

　にんまりと笑う皆に見送られながら、朝子は足早にフロアを抜けると、エレベーターに飛び乗った。

　朝子の仕事が忙しくなるのに合わせるかのように、須藤の仕事も多忙を極め、ここ最近は二人でゆっくりと会うこともままならい日々が続いている。

　でもつい先日、須藤から予定を合わせて会いたいと連絡が来たのだ。

　今まで須藤の方からそんなことを言われたことは一度もない。

　朝子は不思議に思いながらも由美やメンバーに事情を話し、今日だけは残業せずに帰宅させてもらえることになったのだ。


　目的の駅に着いた朝子は、急いで地下鉄の階段を駆け上がると、須藤と待ち合わせをしているレストランに向かう。

　店に入り、先にテーブルについていた須藤を見つけると、朝子は飛び跳ねるように側に駆け寄った。

「瑛太さん」

　声をかけながら、振り返った須藤の笑顔にドキッとする。

　いつも連絡を取っているとはいえ、久しぶりに顔を合わす須藤は、やはり眩しいくらいにカッコイイ。

　にっこりとほほ笑む顔を見ながら、朝子は恥じらうように須藤の向かいに座った。
< 102 / 147 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop